保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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黒子組合 九

定吉こと蔵吉は呆然とした表情を浮かべている。須田は腕組みをしながら蔵吉の顔をにらみつけ、保室は更に話を続けた。
「だからあなたは、団六蔵と一緒に黒子組合などというのをでっちあげた。このご主人の顔に見事な黒子があるのを幸い、黒子のある人間でないと入れないという条件をつけてです。善兵衛殿を入れることは始めから決まっていた、でないと店から引き離せませんからね。さらに二朱という報酬も、善兵衛殿を惹きつけるにはそこそこの額だった。そして、主人不在となった店で、あなたと団、そして倉木屋の倅と名乗る男は、まんまと盗んだ金のための蔵を作れたわけだ」

蔵吉はぼそぼそとこう言った。
「なぜ、そこまでのことがわかった…」
保室は畳みかけるようにこう言った。
「なぜって、毎日のように一定の間ある人物を特定の場所に留めておく、これほどわかりやすいものもありませんよ。しかも善兵衛殿は、途中から休みが増え、そして報酬も増えている。これが何を意味するか、須田さんわかりますね」
須田は不意を突かれて驚いた様子だったが、やがてこう答えた。
「つまり、それだけ羽振りがよくなって、蔵の普請も終わりに近づいて来たということですね?」

保室は満足そうにうなずいた。
「休みが増えた時は、蔵は大体出来上がっていたといってもいい。しかし、もう少し善兵衛殿を仕事で縛りつけておく必要があった。金を運ばせなければならないからね。だから報酬をはずんで、歌集の写しという仕事を続けさせるようにしたのだ」
須田がそこで口を挟んだ。
「そして今日になって、ある男からこの件で垂れこみがあった。その男はうまく変装していたが、実は今、ここにいる」
そして須田は蔵吉の方に向き直り、こう言った。
「蔵吉、おまえだな。うまく年寄りに変装していたが俺にはお見通しだったぜ」
突然蔵吉が笑い声を上げた。

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