保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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黒子組合 十

「ははは、よくわかったな。正にその通りだよ」
蔵吉は、それまでとは別人のようなどすの利いた声で、須田の方に向き直った。
「旦那も隅に置けねえなあ、そこまでお見通しだったかい」
銀蔵がすかさずそれに応じた。
「垂れ込んで来た奴というのは、結構胡散臭いものだ。おまけにことの一部始終を細かく話す、普通の垂れ込みならここまでやらないぜ。蔵吉、いや定吉、神妙にお縄をちょうだいしろ」
「おっと待った、俺はこう見えても、そこそこの商家の生まれだ。せめて『定吉さん』だの、『一緒に行きましょう』だの、もうちっと丁寧な言葉をかけてもらいたいもんだな」
銀蔵は苦笑しつつ言った。
「では定吉さん、番屋までご同行願えますかな」
「よろしかろう」
二人は定吉を囲むようにしてその場を離れて行った。

善兵衛とその娘婿は呆気にとられていた。
「結局、蔵吉がすべてを仕切っていたというわけですか」
「いや、蔵吉は手先ですよ。本物の悪人はその裏にいます」
「本物の、悪人…」
「名前は明かせませんがね、幕府出入りの学者でかなりの大身です。この件に関しては、また須田さんがそちらに色々伺いますので、その辺りどうぞよろしく」

私は保室に訊いた。
「なんで、あの男が盗賊団と関わりがあるとわかったんだ」
「定吉か。あいつは前に盗賊団が狙った店の番頭で、一味の内通者だったのさ」
保室は恐らく、私たちが長崎にいた頃に、江戸で起きた事件について語り始めた。
「元々下見のために番頭になったようなもんだから、それっきり行方知れずだった。しかし今度は名前と人相を変えて、蔵吉と偽って倉木屋に、それもある人物の紹介という触れ込みで入ったわけだ。」
「よくそんなことまで調べたな」
「すべては銀蔵のおかげだ、あいつは生き字引だよ。須田さんよりよく知っているからな。それを聞いた時に、すべてがつながったわけだ。」
「どうやって銀蔵から聞き出したんだ」
「先生、あんたがこの間代診に行っていた時だよ。ちょうどあの時須田さんと銀蔵が来たから、すべての疑問をぶつけたんだ。それでやっとつながったよ」
「蔵吉が商家の生まれというのは本当なのか」
「多分本当だ。しかし子どもの頃没落してから、他の店に奉公に出されたらしい。そこで件の人物と知り合ったらしい」
「くだんのじんぶつって…」
「和田先生、もう少し頭を働かせてくれよ。もの字殿に決まっているだろう」

「ところでお前さんは、蔵に入る時に何か拾ったがあれはなんだ」
「何も拾ってやしないよ」
「何も拾っていないって」
「ああいうそぶりを見せれば、必ず蔵吉は動揺すると思ったからだよ。自分が何かやばい落し物でもしたのではないかとね。案の定、かなり不安そうだったから、やはりこいつが関わっているとぴんと来たんだ」

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