保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。なお「蜂曽我部家の怪猫」については、大河リメイクの「跡を継ぐ者」が終わり次第アップ予定です。

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黒子組合 十一

その後私たちは、すっかり暗くなった道を、寒風に吹かれながら梅花町まで歩いた。
「これでどうにか一件落着だな」
「この件に関してはね。しかしもの字殿のことがあるから、この先まだまだ妙なことが起きそうだ」
「かの御仁は、そこまで力を持っているのか」
「表向きは大したことはないが、裏では色々な所と関わっている」
「お前さんも結構詳しいなあ」
「私にはあれこれ垂れこんでくる奴がいるからね」

家にほど近い辻にそば屋が出ていた。いくらか食指が動いたものの、結局私たちはそのまま歩き続けた。
「ところで一つ訊きたいんだが…」
「何だ」
「筆がどうこう言っていただろう、あれは結局何だったんだ」
「筆か…」
「なぜあの隠居に自分の筆を持たせたかだよ、何かこの件に関わっているのか」

保室は瞬間笑いがこみ上げるような表情を見せたが、かろうじてそれを押さえて言った。
「あの盗賊どもに筆のことなどわかるわけがないだろう。少なくともあのご隠居は、商売で筆の何たるかを知っていたが、そこまでは蔵吉一味にはわからない。変なところでぼろが出ないように、自前の筆を持たせたというわけだ。和田先生、俺の相棒になるのなら、そのくらいはわかっておいた方がいいぜ」
この男らしい、いささか横柄な物言いだが、いつものことなので別に腹は立たなかった。そして我々は、表の戸をそっと開けたところ、鳩さんの声が聞こえてきた。
「まあ先生方、お帰りなさいまし。お夜食の用意をいたしましょうね、おそばは如何かしら」
(完)
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