保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。なお「蜂曽我部家の怪猫」については、大河リメイクの「跡を継ぐ者」が終わり次第アップ予定です。

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蜂曽我部家の怪猫 二

その後も私は梅渓先生の用で、里村藩の蜂曽我部家の城下へ何度か出かけた。行く度に、例の化け猫騒動は城下に広がって行った。秋に初めて行った頃に比べると、翌年の桜の頃には、城下の多くの人々がそれを知るようになり、商家の丁稚がその話をしていて、手代に叱られているのを耳にしたこともある。そんな中、私がお邪魔した城下の医家、望崎家でも、これの煽りを受けるようになっていた。

城下の人々は、化け猫騒動で騒いでいるだけだが、蘭方医の間ではこれが大きな打撃となり、いやがらせまで起きているらしい。どうやら筆頭家老の手の者のようだが、望崎家の前で飲んだくれて、深夜に家の前で大きな声でわめく連中がいたということだった。また別の蘭方医の家では、薪の燃えさしのようなものを投げ込まれ、危うく火事を出すところだったようである。しかも、数少ない蘭方医や蘭学者の家のみならず、次席家老の関係者の家にまで、このような嫌がらせが相次いでいるということだった。

その後江戸に戻り、半月ほど経った時のことだった。春も半ばを過ぎた頃なのに、数日ほど寒い日が続き、私と保室は火鉢のそばで暖まっていた。おまけに雨も降り出し、保室への化け猫話も一応済んだため、私たちは早めに寝ることにした。その翌朝、私の部屋の障子の向こうから、あずさが激しく呼ぶ声がする。一体何事かと障子を開けると、あずさと梅渓先生、そしてもう一人、学者のような風体の男がそこに立っていた。

梅渓先生は、その男を縁先に座らせ、私にこう言った。
「この御仁を、しばらくここで預かってもらえないだろうか」
その男は半田という蘭学者で、蜂曽我部家の若君の家庭教師的役割をしており、西洋の文物などについて若君に教えているということだった。しかし筆頭家老からにらまれることとなり、蘭学の師の友人である梅渓先生を頼って、ここまで逃げて来たのだという。一応鳩さんにも了解を取っていること、そしてこの半田という学者が病気であることを告げ、梅渓先生は去って行った。

私は早速、母屋の小部屋に半田を寝かせ、様子を見た。元々風邪気味であったのが、今度の逃避行によって、具合が悪くなっているようだった。あずさに看病の仕方を教え、薬を調合しているところへ、保室がふらりとやって来た。
「先生、どうやら始まったようだな」
「始まった…とは、何がだ」

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