保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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蜂曽我部家の怪猫 七

その後も私は里村藩の城下に滞在した。先生からの話だけでなく、町を歩くついでに、例の怪猫のこと、蘭学者のことなど訊いてみようと思ったが、多くの人は、その話を露骨に嫌がっているようだった。私はある飲み屋に入り、それとなくそこの親父にこの話題を振ってみた。親父は困ったような顔をしたが、私の耳元に口を近づけてこう言った。
「あの化け猫のことなら、まだ噂になっていますよ」
私も小声で訊き返した。
「それと、蘭学者のこととは何か関係があるのかね」
「表向きはなさそうですが、本当のところはさて、どうだか…」

飲み屋の親父にいわせれば、城下の人間はその話をしたがらないが、関心は持っていること、城中のことは全くわからず、藩主や若君に危害が及んでいるようには見えないこと、そして、先日明らかに城下住まいとは思えない、江戸から来たであろう大身の武士が何名が通ったことなどを話してくれた。
「ありがとう。しかし、こんな話をして大丈夫なのかね」
「いや、こんな商売をしていると色々なことが耳に入って来ますし。ですからあなた様も、たまたま聞いたこととしておかれるといい話でして」
さらに、その親父はこうも言った。
「それに、あなた様にはどこか信頼がおけますので」

先生の所に戻った私は、保室に取りあえず手紙を書こうと思った。するとそこへ、望月先生が現れて、患者である旅籠の主人から聞いたと言って、江戸からの旗本と思しき武士が、変装して泊まっていたことを話してくれた。
「変装ですか」
「行商人に変装していたようだが、物腰がどうも侍臭かったらしい。その後、たまたま番頭が使いに出たところ、その行商人にそっくりな侍が、供を連れて歩いているのを見たようだ」
「また、なんでそんなことを…」
「しかも普通の侍というよりは、学者のようだったらしい。その主人も不思議がっていた」

大身の侍、学者と聞いて私の頭をよぎるのは、やはりかの森崎殿だった。しかし今は、そこまで疑ってかかるべきではないと思い、まず町のこと、そして旅籠の主人の件を書き送ることにした。もし、手紙の中身を改められでもしたらと思ったが、必要なところはそれとなくぼかすようにして、何とか手紙を書き終え、梅花町へ送った。
その後半月ほど経って、私は保室からの返信を受け取った。取りあえず手紙が無事に届いたことに安堵しつつも、梅花町の様子も気になっていて、そそくさと封を切った。それには、このようなことが書かれていた。

「里村藩のことを色々とありがとう。件の半田殿はすっかり元気になって、色々手伝いをしてもらっている。近いうちに、単身そちらに行く予定だ。どうもこの裏には、家老のみならず、それ以外の人物も関与しているようだ。それではまた」

しかし保室の手紙には「いつ」来るかが明記されておらず、私はその時を待ちわびながら、日々を過ごさなければならなかった。

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