保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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蜂曽我部家の怪猫 九

「お、お前は一体なんだ」
「おいおい順庵先生、もう俺の声を忘れていると見えるな」
覆面を取ったその男は、我が友保室紗鹿だった。

「いきなり変な格好で来るなよ。物盗りかと思ったぞ」
「いやお前さんが、どのくらい用心深いか試してみたのだが、その様子じゃまだまだだな」
「しかしここまでどうやって来たんだ。初めてだとこの辺りはなかなかわかりづらいぞ」
「もう何日も前からいたよ」
「何日も前…」
「そうだよ。お前さんは丘の上で竹の皮や紙を拾っていただろう」
「なんでそれを知ってるんだ」
「そして椀と箸も拾って、それをわざわざ寺まで持ち込んだだろう」
「あれはひょっとして…」
「さよう、俺のしわざさ」

保室は部屋の中に入って来てあぐらをかき、こうも言った。
「あれでも気が付かなかったようだから、今回こういう風に、ちょっと変わったごあいさつをしてみせたのさ。明日でいいから、望月先生に話したいことがあるのだが…大丈夫かな」

翌日、私は保室を望月先生に紹介した。先生は興味ありげとも、胡散臭そうなとも取れる目で保室を見ていたが、彼が話を始めると、身を乗り出すようにして聞き入っていた。
「このご城下を見る限り、お侍衆が何か、非常に慌てているようにも見えます。恐らく城中では、ただならぬ動きになっているのではないかと」
「やはりそうか。で保室さん、あなたならどうするつもりか」
「まず和田順庵先生を数日お借りしたいと思います」
「よろしい。仕事が速いので助かっているから、数日暇をあげよう。その他には、何かあるかね」
「実は、城中の事情にお詳しい方を、どなたかご存知でしょうか」
私は正直言って驚いたが、保室は真剣な表情をしていた。望月先生はしばらく考えていたが、やがて、このように切り出した。

「以前の患家で、今はもう隠居しているが、詳しい方がおられる。一度、話をしてみよう」

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