保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。なお「蜂曽我部家の怪猫」については、大河リメイクの「跡を継ぐ者」が終わり次第アップ予定です。

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蜂曽我部家の怪猫 十一

保室は何やら納得したような顔をして、さらに冨楽庵に尋ねた。
「では、化け猫騒動は、蘭学者の失踪と何か関わりでも」
「大ありじゃ」
冨楽庵はそこで声をひそめ、辺りをはばかるようにして言った。
「そもそも化け猫、怪猫などはおらぬ」

保室はますます、我が意を得たりという顔になった。
「蘭学者が消えたのは、つまり化け猫のせいにしたかった…」
「そなたはよく見ておられるようじゃのう」
今度は私の方が、わけがわからなくなって来た。
「つまりこちらの御城下の化け猫騒動は、かくれみの…」

冨楽庵はさらに声をひそめ、我々にこう伝えた。
「これ以上のことは、相すまぬが、そなたたちの耳に入れるわけには行かぬ。ただし、御家老の一派が仕組んでいることは、これは事実である」
「承知いたしました」
保室はうなずき、そして冨楽庵に尋ねた。
「貴方様も、恐らくはその御家老とお近づきがあったとお見受けします」
冨楽庵は声には出さなかったが、黙って二度ほどうなずいた。

「一体どういうことなんだよ、やはり化け猫は蘭学者殺しと関係あったのか」
「声が大きい」保室が私をたしなめた。
「和田先生、あんたは普段は慎重だが、興奮すると声が大きくなる。悪い癖だ、やめた方がいい」

我々は望月先生のお宅に戻った。夜が更けていたが、女中が二人分の夕餉を整えて待っていてくれた。保室はうまそうに平らげていたが、私はかの冨楽庵から、蘭学者殺しと化け猫騒動の関係をはっきり肯定されたことが、逆にすっきりしなかった。保室が飯をかきこみながら言った。
「順庵先生、きちんと飯は入れておいた方がいいぜ。明日もまた出かけることになる。明日は、変装して行くことになるからな」

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