保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。なお「蜂曽我部家の怪猫」については、大河リメイクの「跡を継ぐ者」が終わり次第アップ予定です。

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黒子組合 三

「その日で終わった、とは…」
「その日を持って終了したから、もう来なくていいということで、何がなんだかもうわかりません」
保室が口を挟んだ。
「報酬はどうされましたか」
「女中がその日の分を渡してくれました。それまでと同じ金額でした」
「ほう…」
保室はその後少し考えていたが、やがてこう口を開いた。
「わかりました。何とかしましょう。お店はこのすぐ先の佐久場町ですね」

善兵衛が帰った後で、私は保室に尋ねた。
「いくら何でも、これじゃひとをからかっているとしか思えないじゃないか。こんなの金持ちの道楽か何かだろ。自分の道楽で会合を作って、飽きたらはいおしまいというやつだな」
「そうでもなさそうだぞ」
「そうでもないって、どういうことだ」
「おかしいと思わないか。なぜ五日来ていた善兵衛が、今度は四日にしてくれといわれたのか。なぜ未の刻から申の刻なのか」
「それは…単なる気まぐれだろ」
「そして、なぜ黒子がある人物で、しかも善兵衛が選ばれたのか。これはどうも大店の隠居というのと大いに関係があるように見えるな」
「お前さんはまたそれかよ。常に背後に何かあり、だな」
「当たり前だ。この背後には何かある」
そう言って保室は、煙草をふかしはじめた。めったに煙草などやらない男だが、何かを考える時には欠かせないものらしい。小半刻あまりもそうしていただろうか、ふいに保室が立ちあがった。
「わかったぞ」

「わかったって、すべてがわかったのか」
「大体わかった。恐らく須田さんの力も借りることになるけどね」
そういって急に外へ出て行こうとしたので、私は慌てて後を追った。別について行く必要があったかどうかはわからないが、何かついて行かずにはいられないものを感じたのである。
「まあ保室先生、これからお出かけですか」
「鳩さんすまないが、ちょっと出てくる。夕飯までには戻るから」
その後を私もついて出ようとしたので、鳩さんは驚いた様子で叫んだ。
「まあ、和田先生もお出かけですか。またどちらかお遊びにでも」
私が夜に出かける時は妓楼であると、この人はいつも勘ぐっているのである。私は違う違うと手を振りながら、急ぎ足で保室の後を追った。
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