保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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黒子組合 五

我々が家に帰ると、鳩さんがいそいそとやって来てこう言った。
「まあ保室先生に和田先生、先ほどから須田様がお待ちなのですが、何かあったのですか」
南町奉行所同心の須田は、既に我々の部屋に陣取っていて、鳩さんが出した茶を啜っていて、我々が戻って来るのを待ちかねたように、勢いよく喋りはじめた。
「保室先生、和田先生、やはり例の一味が絡んでいましたよ」
「一味…とは、何のことです」
私は何やら狐につままれたような気持だった。そもそもなぜ須田源一郎がここにいて、保室とあたかも示し合わせたような話を始めたのかが、全くわからなかった。

「そもそもこの事件は、さる大名家から千両箱が盗まれたのが原因です」
「大名家じゃ、奉行所は関与できないだろう」
「確かに、町方が出て行くものではありません。しかし、それを盗んだのが手配中の盗賊一味であったことから、我々も出て行かざるを得なくなりました」
そこで保室が切り出した。
「で、例の御仁も絡んでいたわけだ」
私はますますわけがわからなくなった。
「例の御仁て誰のことだよ」
「森崎様ですよ」
「森崎様て、あの御用学者の…」
「その通りです。西洋の学問をはじめ様々な学問に通じていて、将軍家はもとより各大名家からも引っ張りだこのようですが、ご本人は至って名誉欲に乏しく、ある伝手をたよって、かたちばかりの将軍家の御用学者を務めているようですが」

話の規模が、とんでもなく大きくなって行ったことに、そして、何よりも自分もその事件に関わっていることに私は驚いていた。須田はその後、直にすべてがわかるでしょうから、また来ますと言い残して出て行った。未だに事件のすべてがつかみきれない私に、保室はにやにや笑いながら声をかけた。
「和田先生、そう驚くなって。俺は前からあの森崎という御仁が、何かに絡んでいるように思えて仕方なかったんだ。将軍家とも大名家とも関わりを持ちたがらないのは、裏で何かを企んでいるからだ。今度のことも、ただ単に材木屋の隠居が騙されただけじゃなくて、もっと深い裏がありそうだぞ」
その時、障子の向こうで鳩さんの声がした。
「あのう…お二人とも、お夕食がまだなのですが、持って来ましょうか」
「そうだったな、すっかり忘れてた」
鳩さんと女中のあずさが膳を運び込んで来たが、私にはまだまだわからないことが多すぎた。

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