保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。なお「蜂曽我部家の怪猫」については、大河リメイクの「跡を継ぐ者」が終わり次第アップ予定です。

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黒子組合 六

その翌日になっても、保室には何ら変わった動きはなかった。相変わらず薬品のにおいを嗅いだり、本をひっくり返したりして時間を潰しており、私もその日は代診はなかったので、梅渓先生からお借りした蘭書を読んでいた。そうこうするうちに、夕方近くなって、日が傾きかけた頃、出し抜けに保室が言った。
「戌(いぬ)の刻、いいかな」
「戌の刻って、そんな時間にどこへ行くんだ」
「例の店だよ。やっと窃盗団が姿を現すぞ、楽しみだな」
やはり今夜のうちに、この事件は解決するようだった。鳩さんとあずさが夕食の膳を下げに来た時に、保室はしばらく外出すること、錠は下ろしておいていいことを伝えておき、我々はその半時ほど前に梅花町から佐久場町の伊崎屋へ向かった。そこには既に須田と、岡っ引きの銀蔵が到着しており、風の冷たい夜のせいか、須田は襟巻をしていた。

伊崎屋の勝手口の方で、主人の善兵衛が提灯を持って待ち構えていた。そばにいる、恰幅のよい四十絡みの男がどうやら娘婿らしい。そして、前の日に見かけた大番頭らしき男もそこにいた。
「このたびはよろしくお願いいたします。何かとんだ事件に巻き込まれたようで、私共もひどく気になっておりますので」
善兵衛はそういって、大番頭と娘婿に先導させ、私たちを蔵の中へ案内した。蔵は流石に立派な造りであったが、ところどころ何かが剥げ落ちたような痕跡があった。保室はそれを手に取って調べていた。
「壁土でも落ちてるのか」
「いや、壁土じゃない。他のものだ」
この男らしく無愛想に答え、私たちは更に中に進んだ。するとそこに、ここ数日で取り付けられたような、いやに新しい引き戸があった。大番頭と娘婿がそれを左右から引っ張って開けたが、目の前に現れたものに、私たちは息を飲んだ。


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