保室の事件帳

江戸版ホームズ+大河ドラマリメイク。

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黒子組合 七

引き戸を開けた我々が目にしたのは、おびただしい数の千両箱だった。五十かそこいらはあるだろう。それが、どう見てもごく最近作られたと思われる隠し部屋に、山のように積まれていたのである。善兵衛は手にしていた提灯を取り落とさんばかりに驚き、大番頭や娘婿も呆然としていた。どうやらこれが、須田が話していた窃盗団絡みの千両箱のようであった。

そこへ須田と保室が進み出、保室が大番頭に声をかけた。
「では番頭さん、そろそろ本当のことを話していただきましょうか」
「本当のこと…とは、一体何です」
「しらばっくれるな、こっちじゃとうにお前の正体はばれているんだ」
大声で怒鳴る須田を保室はたしなめ、再度その大番頭に声をかけた。
「まずこの引き戸と隠し部屋ですが、この蔵の古さからすると如何にも新しい。ここがまず奇妙です」
さらに保室は善兵衛にも声をかけた。
「あなたは、この部屋を作るようにこちらのお二人に指示をしましたか」
「全く身に覚えのないことです。今日初めて知って、今はとにかく驚いています。しかも部屋だけならともかく、こんなに千両箱があるなど、どういうわけだか…」

保室は我が意を得たりといった表情になって、善兵衛にこう言った。
「ご存知なくて当然です。この隠し部屋も千両箱も、あなたがいない間に作られ、運び込まれたものだからです」
「私がいない間…」
「そうです。あなたは歌集を書き写す仕事で、ここのところ朝から昼にかけて家を空けておられた。その隙を狙って、よからぬことを考える者たちがここに部屋を作り、盗んだ千両箱を運び入れたのです」
「そんなことが…しかし、なぜうちの蔵に」
「あなたを陥れるためですよ」
保室はそう言って、今度は大番頭の方に向き直った。
「この部屋を作ったのも、千両箱を入れる指揮を執ったのもあなたですね。」


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